トップページ > 全記事一覧 > 「大きく息を吸ってください」 健康診断のレントゲンはなぜ写るの? 後編
胸部エックス線写真はなぜ写るのか
例えば、「大きく息を吸って」の胸部エックス線写真を例に考えてみましょう。肺の中には空気が多く存在しているので、エックス線は減弱せずに反対側から出てきます。一方、心臓は多くの血液が集まっていることから、減弱して出てきます。実際は、たくさんのエックス線が入射するので、隣り合う物質ごとに反対側から出てきたり出てこなかったりと、細かく差がついて不均等な分布を作ります。均等なX線が不均等になったということは、X線が人体を通過している間に、人体情報を含んだ事になります。この不均等な分布を画像化したものがエックス線画像となります。
医療用のエックス線画像では、反対側からたくさんエックス線が出てきたときは黒く、減弱したときは白く写ります。今までエックス線写真としてフィルムが使用されてきました。カメラのネガフィルムを思い浮かべてみてください。フィルムに光が多く当たれば黒くなります。エックス線は光の一種ですので、同じようにフィルムを感光させます(なお、現在では、特殊な装置を使用してデジタル化されたエックス線画像が一般的になっています)。

- 肺は黒く写り、骨は白く写る
もちろん白か黒かというような単純なことではなく、グレーも存在しますので白黒の濃淡で画像は形成されています。すると、あるべきところに何かがなかったり、ないはずのところに何があったりすると、そこに異常が疑われます。例えば、白く写るはずの骨の一部が黒く写るということは、そこに骨がないということになります。骨折やひびが疑われます。
こうして撮影されたX線画像は、画像診断が得意なお医者さんが診ます。これを「読影(どくえい)」といいます。読映の内容は、診断レポートにまとめられて主治医に渡され、診断の助けになります。
- なぜ大きく息を吸うの?
- 肺は、息を吸うとふくらみます。大きく息を吸うことで、隣合う物質の間隔が広がるため、病気の場所が見つけやすくなるのです。逆に、お腹の方を撮影したいときは、大きく息を吐いて撮影します。
CTスキャンもエックス線を使って撮影する
CTスキャンもエックス線を使っています。しくみは、エックス線撮影と同じですが、360°の方向からエックス線を照射して撮影するため、三次元のデータを得ることができます。現在ではエックス線を照射する装置が螺旋状に動いて広い範囲のデータを収集する「マルチスライスヘリカルCT(MDCT)」が主流です。

- CTスキャンで撮影した頭部(資料提供:東芝メディカルシステムズ株式会社)

- CTスキャンで撮影した立体画像(3D再構成画像)(資料提供:東芝メディカルシステムズ株式会社)
放射線を使わない検査
エックス線などの放射線を使わずに、人体の中の情報を取り出す検査があります。健康診断でよく受ける超音波検査も放射線を使わない画像診断装置です。また、MRIという検査では、放射線の代わりに巨大な磁石と電波を使います。人がすっぽり隠れてしまうくらい大きな磁石の中に入って、ある特定の周波数の電波を照射すると、体の中から特定の周波数の電波が返ってきます。この電波を受信して画像化します。人体を輪切りにしたような情報が得られる検査です。

- MRIで撮影した画像。人体を任意の方向の断層で輪切りにした画像を得ることができる。画像には、脊椎が写っている。骨の後ろには脊髄神経があり、椎間板により圧迫されている様子がわかる。
このように、エックス線などの放射線を使わなくても人間の体の中の状態を知ることができます。放射線を使う検査と使わない検査、どちらが優れているということではなく、疑われる病気によって、最も適切な検査方法が採られています。
病院の役割は、診断と治療です。患者さんが治癒するためには、患者さんの身体的、医学的、物理的状態を知り、正しく診断する必要があります。そこで患者さんの状態がわかれば、いくつかある最適な治療法を選択して実施します。そのためにも、この記事で述べたような、検査が非常に重要となってくるのです。
最後に、これらの画像診断装置を用いての撮影は、「診療放射線技師」が行っています。表には出ませんが、患者さんの被曝線量を少しでも少なく、データ量は少しでも多くなるよう日々研鑽して頑張っています。わからないことがあったら、お気軽に声をかけてみて下さい。
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